【バク宙の基本】回転力を得るために「まっすぐ」から「まる」を作ろう!

プロフィール

わたるコーチ

元シルクドソレイユパフォーマー
男子新体操歴24年
全日本選手権4連覇
Cirque du Soleil 「Drawn to Life」
600本以上出演

手を付かずに後ろに1回転する技「バク宙」。
高いジャンプ力が必要な気がしてしまうこの技ですが、実はそれ以上に必要なのは回転力です。
支えがない空中でどうやって力を使ったら体が回ってくれるのか…?

この記事ではそんな回転力の作り方について解説していきます!

「バク宙」や「宙返り」と呼ばれることが多いこの技ですが、お堅く言うと「後方抱え込み宙返り」という名前になります。
「抱え込み」と言うのは体を丸くする動作のことをいい、その反対に体をまっすぐに伸ばして宙返りを行うと「伸身宙返り」と名前が変わります。

この記事で出てくる「宙返り」という言葉は抱え込み宙返りのことを指していますので、その認識で解説を進めていきます。

種類① スタンド宙返り

これはその場で行う宙返りのことを指しています。

立った状態から行うことから体操業界では「スタンド宙返り」と呼ばれることが多いですが、ダンスやチア業界の方達とお話をしていると「単宙」と呼ばれている印象が強いです。
(おそらく「単発宙返り」の略称だと思います。)

種類② ロンダート宙返り

体操選手が宙返りをする前にやる側転みたいなやつ。
あれは「ロンダート」って言います。(ロンダードと呼ぶ人もいます。)

宙返りをするための助走みたいな技です。
スタンド宙返りより勢いがつきやすいので、「えいっ」とやれば宙返りが回れます。
ただ、ロンダートもなかなか奥が深い技なのでそれなりに練習が必要です。

スタンド宙返りは立ち幅跳び。
ロンダート宙返りは走り幅跳び。

やることは同じでも必要な技術はちょこっと違います。

宙返りの難しさ

みんなの憧れ、バク宙。

僕の感覚では、バク転よりも簡単です。
簡単というか単純です。

バク転の場合、ジャンプの方向を調整して、高さを調整して、体を反らせて、手をついて…とたくさんやることがありますが、宙返りはそこまで繊細な技ではありません。

ただ、それなりに難しいポイントはあるので、そこをまとめていきます。

①ジャンプ力が必要

まず、ジャンプ力が必要です。
「高いジャンプができる=滞空時間が長い」
となるので、ジャンプ力があればあるほど宙返りは楽に回れます。

ジャンプ力というと下半身の力を想像すると思いますが、ジャンプに必要な要素はもっともっとたくさんあります。
力はもちろん、正しい姿勢・筋肉の使い方も必要ですし、腕の振りのスピードやタイミングの調整も必要です。
※ジャンプについてはまた細かく別の記事でまとめたいと思います。

②スピードが必要

動作が早ければ早いほど宙返りは成功率が高くなります。
いくら強いジャンプ力を持っていて長く空中にいられるとしても一瞬であることに変わりはありません。

曲げた膝を伸ばすスピード、腕を上に振り上げるスピード、体を小さく丸めるスピード…
全ての動作のスピードが必要なります。

③回転力が必要

さて、一番重要なのがこれです。
どれだけ高く跳べてもどれだけ速く動けても回る力が弱かったら宙返りは成功させられません。

何も支えがない空中で強い回転を作り出すためにはどうしたらいいのでしょうか?

回転力の作り方

宙返りにおいて一番重要な要素である回転力を作り出すためには具体的にどういったことをすればいいのか…?

2つのことをお話ししていきます。

①体の形を意識

まず最初に体の形を意識します。

宙返りだけに限らず、抱え込みの状態で技をする時に共通して言えることがあります。

それは、「まっすぐ→まる」が回転力を生み出すということです。

体のパーツをしっかりと伸ばしてまっすぐな状態を作り、そこから小さく丸くなることにより「回転」という運動が生まれます。

これを宙返りに置き換えると…

まっすぐ=ジャンプした瞬間
まる=空中

となります。
ジャンプをする前に助走の動作として軽くしゃがむと思います。
その際には膝や股関節が曲がっているのですが、ジャンプをした時には体をまっすぐにしなければいけないので、膝や股関節、そしてつま先までもまっすぐに伸ばします。

そうしてジャンプをした後に小さく丸くなることにより体がくるんと回ってくれます。

後ろに回転する技なので顔や腰を反らして後ろに回りたくなる気持ちはよくわかります。
地面を早く見たくなる気持ちもよくわかります。
でも、体は反らさないでください。
体を反らすことによって上半身の回転力は得られますが、下半身の回転力は得られません。
上半身はうまくできていても脚がついてこないので、着地ができず技を成功させられなくなってしまいます。

抱え込みは脚をお腹に近づける動作なので、しっかりと丸くなることができれば上半身と下半身がバラバラになることなく全身を1つのまとまりとして回転させることができます。

・前を見て跳ぶ
・お腹を見ながら回る

この2つを意識するのはとても怖いことです。
回ってこなかったらどうしようなんて思ってしまうのですが、ちゃんとやればちゃんと回ってきます。
補助者の方についてもらいながらしっかり意識してみましょう。

②スピードを意識

形が意識できたら次はスピードです。
先ほども言いましたが、空中にいられる時間は一瞬です。
その一瞬の間に体を1回転させなければいけないので、スピードを意識してください。

具体的には、ジャンプしてから丸くなるまでの動作をとにかく速くしてください。
120%の集中をそこに注ぎ込んでください。

その動作が速ければ速いほど強い回転力が作れます。

【正しい形×その速度=回転力】

これ、覚えておいてくださいね。
テストに出ます。

練習方法

とはいえども、宙返りを何回も何回も練習してればうまくなるというわけではありません。

体操の空中技には地に脚をつけて安定した状態で行う練習方法が必ず存在します。
実際に技をするときは怖さもありますし、一瞬の間に考えられることは限られているのでどうしても意識が薄くなってしまいます。
こういった練習方法を活用して、考えなくても体が勝手に動いてくれるような状態を作ると、実際に技を行った時に改善が見られるようになると思います。

床でイメージトレーニング

具体的にはこれをしましょう。

①腕を上げた状態で仰向けに寝転がる
②顎をしめてお腹を見ながら脚を抱え込む
③そのまま後転をする
④その動作をとにかく速くやる

この練習は今すぐやめて!

抱え込みの形を覚えるための練習としてよくいろんなところでこんなのを見かけます。

今すぐやめてください。
こんな抱え込みの姿勢を空中でしたら失速して頭から落ちます。

なぜかというと、体の形が丸くないからです。
脚を抱え込んだだけの状態をよく見てください。
背中と腰がまっすぐですよね。
体を丸くするときは、体にあるパーツ全てを丸くしなければいけません。
背中、腰も当然含まれます。

丸くなっていなければ回転力が作れないので、回ることができません。

体は何度も繰り返した動きや姿勢を覚えてくれます。
いい形を覚えさせられたらその形は一生忘れません。
そして、悪い形を覚えさせても一生忘れません。
悪い癖がつくと直すのがとっても大変なのです。

癖がついちゃう前に形だけの練習はやめましょう。
(体の形の話なだけに)

まとめ

回転を作るためには
【まっすぐ→まる】
そして、それは素早くやる!

超大事なポイントをまとめました!

宙返りのコツは他にもたっくさんあります!
ジャンプのコツもたくさんあるし、腕の振り方のコツもたくさんあります!

徐々に更新していきますので、楽しみにお待ちください😊

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